2018年10月21日日曜日

都市の駅をハブ化する

 「ハブ空港」ということばがあります。これは、航空網において長距離航空と国内、大陸内航空の乗り継ぎの中核になる空港のことです。

 この「ハブ」ということばを鉄道網の駅につけると、どういう駅になるのでしょうか。乗り継ぎの中核になる拠点駅がまず思い浮かびます。

 ぼくは、8章「交通の未来」の「グリーン電力で走るドイツ鉄道」の項においてドイツ鉄道のカーシェアリングについて紹介しました。ドイツ鉄道は長距離の移動に鉄道を使い、主要駅からカーシェアリングで電気自動車で移動してもらうというサービスを展開しています。

 これは、鉄道と電気自動車を結びつける新しい意味での「ハブ駅」です。これをさらに、大都市内で主要駅をハブ化するとなると、どうなるのでしょうか。

 大都市の電車や地下鉄の駅を降りると、電気自動車のカーシェアリングステーションをはじめとして、電気バイク、電気キックスクーター、自転車のシェアリングステーションがあります。あるいは、小型の乗り合いバス(ライドシェアリング)の拠点もあります。

 都市毎にこれらを予約しておくアプリをスマホにダウンロードしておけば、どこにいっても必要な時に、自動車や自転車などに乗れます。

 こうすれば、大都市の交通が多様化し、大都市を走る自動車の数を減らして渋滞解消効果も生まれます。個人で自動車などを持っている必要もなくなります。

 ドイツ北部の大都市ハンブルク(switchh)では、カーシェアリング会社などと共同で都市交通公社がこうした試みをはじめました。ベルリンでも、試験的にはじめてみることが検討されています。

 都市交通は、早いテンポで変わろうとしています。

まさお

2018年10月14日日曜日

再エネと立役者

 ドイツの再生可能エネルギーといえば、元連邦議会議員のヘルマン•シェーアを忘れることができません。志半ばにして、亡くなられたのはなんといっても残念でなりません。シェーアさんの死は、ドイツの、いや世界の再生可能エネルギーにとって大きな痛手となりました。

 国際エネルギー機関(IEA)に対抗する形で国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の設立に尽力されたのも、シェーアさんでした。

 以前、経産省の知人からドイツの再生可能エネルギーの立役者にヒアリングしたいと聞かれたことがあります。すぐにシェーアさんを挙げたのですが、経産省の官吏が社民党の政治家に会うわけにはいかないと返事がきました。何というやつらだと思いましたが、でもといって押しに押して会ってもらったら、後でたいへん感謝されたことがあります。

 日本の官僚自体が喰わず嫌いで、自国の利益のために働くのではなく、イデオロギーに凝り固まっていることがよくわかりました。

 ドイツでは、シェーアさんだけが再生可能エネルギーの立役者ではありません。各地に、それぞれの地元で再生可能エネルギーを牽引した立役者がいます。

 ドイツ南西部シェーナウでは、日本でもよく知られている市民電力会社のスラーデクさんご夫妻。

 ドイツ北東部のプレンツラウを風力発電の拠点の一つに育てたのは、エネルトラーク社です。その設立者がミュラーさんです。ミュラーさんは元々、東ドイツの原発建設のエンジニアでした。

 南西部のヴェルシュタットに立地する再生可能エネルギーのゼネコンJUWI社は、農民が共同で起業したスタートアップでした。

 ドイツ北西部のパーダーボルン地域では、1990年代中頃から風力発電が活発に拡大されています。その立役者がラックマンさんでした。ラックマンさんは元々は、IT関係のエンジニアでした。

 デンマーク国境沿いのドイツ北端で市民風力発電をはじめたクリスチャンセンさんも、忘れることができません。

 再生可能エネルギーで発電された電気の固定価格買い取り制度(FIT)の原案を考案したのは、ドイツ西部アーヘンの市民たちでした。

 こうした立役者が地元で住民をまとめ、再生可能エネルギーを市民の手で普及させたのでした。

 各地において再生可能エネルギーを市民の手で普及させる。そのためには、各地で市民をまとめて牽引する立役者も、重要な役割を果たします。

まさお

関連サイト:
地道な市民論
エネルギー選択宣言

2018年10月7日日曜日

レアメタルやレアアースによる再エネ攻撃に騙されるな

 最近、ぼくの加入しているMLに、レアメタルやレアアースを使う風力発電を攻撃する記事のリンクが回ってきました。従来通りの発電方法を支援する米国のエネルギー•シンクタンクが拡散しているものでした。

 レアメタルやレアアースを採取する中国において、それによって排出される放射性廃棄物の管理がずさんなので、被害が出ているという内容です。直接風力発電を批判しているわけではありませんが、放射性廃棄物を排出する物質を使う風力発電はいかんといっているのは明らかです。

 リンクの送り主は、この情報は正しいのかと聞いています。

 情報は、間違っていません。風力発電では確かに、レアメタル、レアアースが使われています。その採取によって放射性廃棄物が排出されるのも事実です。

 それなら、風力発電は原子力発電と同じように、止めたほうがいいのでしょうか。

 記事では、記事に書いていないことが問題です。それは、レアメタルやレアアースが他にどういうものに使われているかということです。

 レアメタルやレアアースは、たとえば太陽光発電にも使われます。ハイブリッド車や電気自動車にとっても、とても大切な材料です。省エネランプであるLEDランプにも必要です。これら環境エネルギー技術に欠かせないということです。

 また発電機にも必要なので、発電のすべての分野に使われています。原発では、制御棒に使われ、原発の安全を確保する上でも欠かせません。

 日常生活においても、たとえば液晶テレビやタブレットコンピュータ、スマートフォンなどにもなくてはならないものです。

 こうして見ると、現在使っている技術のほとんどに使われていることがわかります。
 
 ただ問題の記事は風力発電にしか触れず、「放射性廃棄物=悪い」という単純思考から、風力発電はいかんという方向に導こうとしています。

 ここで問題にされている放射性核種が天然放射性核種であることも、はっきり書かれていません。天然放射性核種は地球上に多種あり、これは太陽系が誕生したプロセスを考えると、地球上にあって当然なものなのです。そして、これら放射性核種の半減期はたいへん長いので、崩壊して安定することがありません。つまり、とても長い時間にわたって、放射性物質であり続けるということです。

 原発事故によって発生する核分裂生成物としての放射性物質と違い、天然放射性核種ではぼくたちの被曝量が少ないことも知ってほしいと思います。

 被曝の問題ばかりでなく、レアメタルやレアアースが中国から輸入される割合がとても高く、中国だけに頼っているのはいいことではありません。そのため、材料のリサイクルのほか、代替素材や代替技術の開発も活発に行われています。

 確かに放射性廃棄物が排出され、しっかり管理されていないのは問題です。だからといって、それだけでレアメタルやレアアースを使っているのはすべていかんというわけにはいきません。それでは、現在ぼくたちの恩恵を受けている技術が成り立ちません。

 これは、「放射性廃棄物=悪い」という単純思考で済む問題ではありません。その点をはっきりわきまえて議論しなければなりません。そのことを知ってもらい、自分自身では何かできるかも考えることが必要だと思います。

 ぼくは、フェアフォーンというスマートフォンを使っています。これは、フェアトレード基準に従って製造されたスマートフォンです。ぼくはそれによって、末端労働者が過酷な条件で酷使されていないことを願っています。

まさお