2018年8月19日日曜日

エネルギーを肌で感じる

 エネルギーとは、何でしょうか?

 ぼくは、9章の「エネルギー源は暮らしの中にある」で、「自分の身の回りで里山や里海を見つける」のが大切だと書きました。

 ぼくたちは、光エネルギー(太陽の光)や運動エネルギー(風や川の水)、熱エネルギー(火力、原子力)を電気エネルギーに換えることによって電気を得ています。熱エネルギーを得るための燃料(石炭)は、化学エネルギー(光合成)によってできたものです。

 電気自動車は、電気を運動エネルギーに換えて車を走らせます。自転車は、ペダルを踏んで足の運動エネルギーをチェーンでタイヤに伝えているから走ります。

 こうして見ると、エネルギーというのは中学校で学んだ理科で十分理解できるものです。生活に密着していて、身の回りで使っているものだと感じます。

 これをもっと可視化させて、ゲームをしながらエネルギーを肌で体験する。それが、ドイツ北西部のアウリヒという町にある「エネルギー学習体験センター(EEZ)」のコンセプトではないかと思います。

 設置、運用しているのは、風力発電設備の大手製造メーカ「エネルコン(Enercon)」です。

 最初に、インストラクターがセンターでの遊び方を簡単に説明してくれます。その後、一人一人がエネルギーゲームに挑戦します。一通りやってみるには、3時間ほどかかります。

 最初に小さなステッィクのようなものを渡され、それをゲームをする装置に差し込んで、ゲームで得たポイントを集めます。最後に集計装置にステイックを差し込んで、集めたポイントを見ます。発行キーを押しておくと、出口のカウンターで成績表をプリントアウトしてくれます。

 ぼくは先日、福島県からドイツにきている高校生と一緒にこのセンターにいってきました。

 LEDランプの光だけで、モデル自動車の屋根に取り付けられた太陽電池で発電させ、モデル自動車を動かすゲームがありました。光の角度によっては、モデルはまったく動きません。風で風船を動かして、輪型になったルートを一周させるだけのゲームもあります。風が適切になるように、レバーで風量を調整しなければなりません。滑車を回して木のボールを上に上げ、ボールを設置されたレールの上をころがすゲースもありました。

 そうかと思うと、火力発電所や原子力発電所を太陽光発電や風力発電に替えるには、画面上どの場所に移すのが適切か探し出すゲースもありました。適切な場所を見つけ出すと、どれくらいの発電容量に代わるのかも教えてくれます。画面上で適切な場所を探すのが、とても難しいゲームでした。

 エネルギー変換の関係を結びつけるゲームもあります。光エネルギーを運動エネルギーに換えるものは何か、化学エネルギーに換えるものは何かなど、その関係を見つけます。

 こうして、ゲーム毎に点数を集めます。難しいゲームも、簡単なゲームもあります。どうしていいのかわからなくても、とにかくやってみる。エネルギーとはどういうものなのか、エネルギーのことをもっと知る。それを実際に体験してみます。

 エネルギーが生活に密着したものであることを、肌で感じます。

 子どもも大人も楽しめるエネルギーゲーム。結構難しいなと思うところもありました。でも、こうした施設がもっとあればいいなと思います。

まさお

EEZサイト:www.eez-aurich.de

2018年8月5日日曜日

交通政策を下から変える

 都市を自動車交通によって窒息させてはならない。

 これが、ベルリンで起こった「Changing Cites」運動のモットーです。運動の中心は、若い世代です。

 公共空間は一体誰のものなのか。公共空間は、自動車や経済活動のためのものではありません。市民は、それに甘んじていてもいけません。市民は、公共空間を市民のものにするために立ち上がるべきだというのが、運動する若い人たちの考えです。

 スマートシティ化。それが、運動の目指すものです。市民が平等に、民主主義的に公共空間を利用できる都市。都市のインフラ整備についても、市民のためのものなのか、市民が監視していかなければなりません。

 そのためには、交通政策の転換も必要です。本来であれば、市民のための交通政策でなければなりません。最近のトレンドである自転車専用道路や交通手段のシェア化だけでは、交通は市民のものになりません。こどもが道路を安全に利用できる権利も守らなければなりません。

 経済を目的とした広告が、都市から撤廃されることも望んでいます。

 こうした市民の都市に対する希望を実現するほか、都市開発において市民側から問題を提起します。そのために住民投票を行って、政治に圧力をかけることもあります。

 また、同じ考えを持つ市民をネットワーク化します。

 「Changing Cites」運動はこうすることによって、道路などの公共空間を市民の対話の場となることを望んでいます。それが、地元の経済力を促進し、都市生活の質を向上させることにもつながります。

 ベルリンではじまった運動は、ドイツ各地に広がっていきました。

 こうした運動が、日本でも起こってほしいと思います。

まさお

参考記事:「バイバイ自動車中心社会

2018年7月29日日曜日

日本のエネルギー基本計画は、自殺行為だ

 日本政府は、「第5次エネルギー基本計画」 を閣議決定しました。

 そこで、再生可能エネルギーの「主力電源化に取り組む」としています。まず、再生可能エネルギーの電源構成に占める割合を、2030年度までに22%から24%にするとしています。

 でも第1章でも書いていますが、日本の場合、約9%は水力発電です。水力発電は確かに自然エネルギーですが、日本のような大型ダムを使った水力発電は再生可能エネルギーではありません。それで、再生可能エネルギーを主力電源にするというのは、矛盾した話です。キャップをかけて、再生可能エネルギーがやたら増えないようにしているとしか思えません。

 もう一つの問題は、2020年から導入される容量市場です。これについては、サイトの「容量市場は必要か?」で書きました。

 ここで見えてくるのは、「主力電源化に取り組む」といっても再生可能エネルギーを主力電源にする気はない、してしまうと逆に困るということです。

 ぼくには、容量市場の導入は、これまでの総括原価方式に代わる新しいメカニズムだとしか思えません。それによって、大手電力会社を存続させ、原子力発電に莫大なお金を無駄に投資してきたこと、さらに原子力発電がやたら高いことを消費者にかわらないようにカモフラージュしているのだと思います。

 その詳細は、サイトを見ていただくことにします。

 ただ、再生可能エネルギーを主力電源にできない日本の事情もわかります。

 再生可能エネルギーが拡大すると、卸電力市場での取引価格が下がります。それは、太陽や風など再生可能エネルギーに限界費用(燃料費など)がないからです。この問題も、第1章で取り上げました。

 ドイツは現在、大手電力会社は再編し、発電事業から撤退する方向にあります。発電では、もう利益を上げることができないからです。ぼくは、再生可能エネルギーについても、将来固定価格買い取り制度がなくなると、そうなると思います。

 でもそうなると、日本では既存の電力市場が存続できません。大手電力会社を存続させるためには、総括原価方式に代わる新しい制度的なサポートが必要になっています。それが、容量市場の導入です。

 日本の地方では、原発に依存する大手電力会社が最大の雇用主です。それが倒れてしまうと、日本の経済、日本社会が成り立ちません。だから、大手電力会社と原発を新しい制度によって人工的に存続させる。それが、今の日本のエネルギー政策なのだと思います。

 でも、世界は再生可能エネルギーへ転換しようとしています。再生可能エネルギーが拡大するとともに、発電コストは限りなく安くなります。そうなると、既存の電力市場構造に依存した日本では、発電コストがやたら高くなってしまいます。

 日本は、伝統的にものつくり大国です。それで、ものつくりが維持できますか。もちろん、できません。再生可能エネルギーへの転換が遅れれば遅れるほど、日本は世界から取り残され、経済競争に負けていきます。

 日本のこの経済構造を換えるためには、長い時間がかかります。国際競争に負けないようにするには、構造改革をできるだけ早く実行して、地方が電力会社に依存しなくていい経済構造に再編しなければなりません。そうしない限り、日本はもう世界の競争に勝てなくなります。

 でも、新しい「第5次エネルギー基本計画」は、電力大手に依存した構想を維持しながら、再生可能エネルギーを徐々に増やすことしか考えていません。日本の将来のことを考えると、それは自殺行為としかいいようがありません。

 それで、いいのでしょうか?

まさお

参考記事:「容量市場は必要か?

2018年7月9日月曜日

再生可能エネルギーQ&A移転のお知らせ

 再生可能エネルギーQ&Aは、これまでこのブログに掲載してきましたが、ベルリン@対話工房のサイトに移転しました。

 今後は、過去の記事も含めてベルリン@対話工房の以下のページで掲載していきます。

 再エネいろはのURLは、以下です。

https://www.taiwakobo.de/neu/eefa/artikel_eefa.htm

まさお

2018年6月23日土曜日

再生可能エネルギーに対する嘘

 ⎡エネルギー選択宣言⎦の第1章で、ぼくは再生可能エネルギーの発電コストが安いことをくどいくらいに説明しました。燃料費はいらないし、メンテナンスもほとんど必要ない。発電設備も小さいので、設備コストは安いし、減価償却期間も短い。

 発電コストが安いのは、当然の話です。

 でも、往々にして再生可能エネルギーは高いといわれます。そこでは、忘れられていることがいろいろあります。

 ひとつ重要なことは、燃料が必要ないので、再生可能エネルギー(特に風力発電と太陽光発電)では、発電量が多くなろうが、少なくなろうが全体の発電コストは変わらないということです。燃料がいらないからです。

 それに対して、火力発電や原子力発電などの従来の発電方法では、発電コストは発電量が多くなればなるほど全体のコストが上がります。それは、それだけ燃料が必要になるからです。

 でも、いくら発電しても全体の発電コストが増えないなら、使うだけ使えるように、需要を増やしたほうがいいのではないですか。その方がずーと得なのは、誰にでもわかると思います。

 それでは、なぜ再生可能エネルギーは高いといわれるのでしょうか。

 それは、再生可能エネルギーで発電できる設備を整備するまでに、お金と時間がかかるからです。それを整備するための施策として、固定価格買い取り制度があります。その制度によって電気を割高に買うことで発電設備を増やしているので、再生可能エネルギーが高くなっているにすぎません。

 それは、再生可能エネルギーがまだ発展段階にあるからです。

 そういう発展段階は、火力発電の時も、原子力発電の時もありました。でも、発展段階にある技術と、定着段階に入ってしまっている技術で、今どっちが高いと比較しては、フェアではありません。発展段階に、お金がかかるのは当然です。

 今もし、再生可能エネルギーで発電する設備が成長して、火力発電と原子力発電で発電できる容量と同じくらいあるとしましょう。そこで、再生可能エネルギーと比べると、火力発電と原子力発電は発電コストが高すぎて、再生可能エネルギーには太刀打ちできません。

 ドイツでは、すでに再生可能エネルギーによる発電量が発電量全体の30%を超え、風力発電の発電コストは、火力や原子力にも負けないようになってきました。

 そうなって困るのは、火力発電と原子力発電で既存権益を得ている電力業界です。

 だから、電力業界はその既得権益を守るために、再生可能エネルギーを増やさないように妨害するのです。

 これが、再生可能エネルギーは高いといわれる嘘のカラクリでもあります。

 それに対抗するには、どうするのか。

 答えはひとつです。再生可能エネルギーを使って、需要をどんどん増やすことです。

 そのためには、市民が再生可能エネルギーで発電された電気を使いたいと声を上げ、再生可能エネルギーで発電された電気を供給してもらう契約を結んでいくしかありません。

 そうすれば、近い将来、電気がとても安いものになります。

まさお

2018年6月18日月曜日

エネルギー相談室は何をするのか?

 ブログでは前回、各地にエネルギー相談室を設置すべきだと書きました。

 それでは、エネルギー相談室は具体的にどういうことをするのでしょうか?

 個人向けには、たとえばソーラーパネルを設置する場合の相談窓口になります。

⁃ 屋根の強度の問題
⁃ ソーラーパネルの種類
⁃ だいたい必要な予算
⁃ 助成金をもらえる条件
⁃ 固定価格買い取り制度で発電した電気を電力会社に買い取ってもらう条件や手続き

などについて情報を提供します。

 また、その他、ソーラー温水器を設置する場合、蓄電池も一緒に装備したい場合にもアドバイスします。また、住宅の断熱効果を上げるためのアドバイス、さらには家庭で省エネする可能性についてもアドバイスします。

 中小企業の場合たとえば、

⁃ ソーラーパネルをつける場合に助成金をもらえる可能性があるのかどうか、
⁃ 企業内で省エネを実現するためにはどうすべきなのか

などについてアドバイスします。

 また、再生可能エネルギーや省エネに関して情報提供するほか、再生可能
エネルギー化、省エネ化を推進するインセンティブを与えるために、ワークショップやセミナーなども開催します。

 こうして、各地域においてエネルギーに関する意識を高めていくのもたいへん大切な課題です。

 こうしたことが、エネルギー相談室が行うべき事例だと思います。

まさお

2018年6月10日日曜日

各地にエネルギー相談室を!

 ぼくは、これまでドイツのシュタットヴェルケについて何回か報告してきました。

 シュタットヴェルケは基本的に、自治体の公営会社として電気、熱、ガス、水道などを供給する公益事業を行なっています。都市鉄道、バス、トラム、地下鉄などの公共交通事業も一緒に行なっているシュタットヴェルケもあります。

 ただ、90年代に自治体の財政難で、民営化されてしまったところも結構あります。

 そのシュタットヴェルケが、日本でも注目を集めているといいます。再生可能エネルギーによってエネルギー転換する手段として注目されているようです。

 ここで、注意しないといけないのは、単に電気を供給するだけのシュタットヴェルケでは機能しないということです。ドイツでも、大都市の大きなシュタットヴェルケは、一般家庭と産業向けの電気と熱の供給を行なっています。そのほうが、効率よくエネルギーを利用できるからで、地域で効率よくエネルギーを利用するためのシステム開発もシュタットヴェルケの重要な役割になっています。

 地域によっては、再生可能エネルギー化のためにシュタットヴェルケへの住民参加を促進しているところもあります。

 実は、日本でもドイツのシュタットヴェルケのような自治体エネルギー公社がありました。でも日本では、電力市場が大手電力9社によって地域毎に棲み分けされてしまいました。ドイツの場合は、大手電力が発電と高圧送電を行い、シュタットヴェルケが地元での発電と配電を行なうことで棲み分けされていました。それが、シュタットヴェルケが残った要因だと思います。

 ドイツのシュタットヴェルケで一番重要な点は、独自に発電しているというよりも、配電網、地域熱源供給網、ガス配管網を持って生活の一番近いところでエネルギーを供給する役割を果たしていることだと思います。それ故に、ドイツの住民はどのエネルギーを選択するのか、大手電力の経済権力に強制されることなく、自分の判断で使うエネルギーを決定することができます。その点で、シュタットヴェルケがとても重要な役割を果たしてきたと思います。

 ドイツのシュタットヴェルケが日本で注目されているのは、歓迎すべきことだと思います。でもそれが、日本でも実現できるか、またはすべきかについて議論するのとは、違う問題だと思います。

 ドイツにはドイツの事情が、日本には日本の事情があります。ドイツのシュタットヴェルケには、ドイツ特有の歴史、背景があることを忘れてはなりません。

 また、シュタットヴェルケを新しく設置するのは、自治体に大きな財政負担となります。そのための専門の人材も必要ですが、日本ではまず人材育成からはじめなければなりません。県庁職員や自治体職員の天下りでは、うまくいきません。

 シュタットヴェルケという箱をつくっても、その中身をどうやって埋めるのかも考えないと意味がないということです。

 エネルギー転換において重要なのは、最終消費者である住民がどのエネルギーを使うのか選択しやすくることです。そのためには、配電網を住民のものとするか、公営化するか、配電網に公共性を持たることが必要です。そのためには、特にシュタットヴェルケが必要であるとは思えません。

 日本でまず必要なのはむしろ、住民など最終消費者に最も近いところで、たとえば住宅を新築する場合やソーラーパネルを設置する場合などにおいて、エネルギー問題についてアドバイスできる「エネルギー相談室」のようなものではないかと、ぼくは思います。

 ドイツでも、エネルギーエージェント(Energieagentur)というエネルギー相談機関が国、州、自治体のレベルに設置され、住民の近いところでエネルギーに関して住民や中小企業をアドバイスしています。

 こういう組織をまず、自治体レベルで日本各地に設置していくべきだと思います。設置に当っては、各地にある既存の環境NPO法人などを「エネルギー相談室」の窓口となるように支援していくのがいいのではないかと思います。そして、それをネットワーク化していきます。

 まず小さくはじめて、次第にネットワーク化で大きなものに育てていくということです。

 その後に、シュタットヴェルケのようなものが必要かどうか、考えてもいいのではないと思います。

まさお

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