2018年10月14日日曜日

再エネと立役者

 ドイツの再生可能エネルギーといえば、元連邦議会議員のヘルマン•シェーアを忘れることができません。志半ばにして、亡くなられたのはなんといっても残念でなりません。シェーアさんの死は、ドイツの、いや世界の再生可能エネルギーにとって大きな痛手となりました。

 国際エネルギー機関(IEA)に対抗する形で国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の設立に尽力されたのも、シェーアさんでした。

 以前、経産省の知人からドイツの再生可能エネルギーの立役者にヒアリングしたいと聞かれたことがあります。すぐにシェーアさんを挙げたのですが、経産省の官吏が社民党の政治家に会うわけにはいかないと返事がきました。何というやつらだと思いましたが、でもといって押しに押して会ってもらったら、後でたいへん感謝されたことがあります。

 日本の官僚自体が喰わず嫌いで、自国の利益のために働くのではなく、イデオロギーに凝り固まっていることがよくわかりました。

 ドイツでは、シェーアさんだけが再生可能エネルギーの立役者ではありません。各地に、それぞれの地元で再生可能エネルギーを牽引した立役者がいます。

 ドイツ南西部シェーナウでは、日本でもよく知られている市民電力会社のスラーデクさんご夫妻。

 ドイツ北東部のプレンツラウを風力発電の拠点の一つに育てたのは、エネルトラーク社です。その設立者がミュラーさんです。ミュラーさんは元々、東ドイツの原発建設のエンジニアでした。

 南西部のヴェルシュタットに立地する再生可能エネルギーのゼネコンJUWI社は、農民が共同で起業したスタートアップでした。

 ドイツ北西部のパーダーボルン地域では、1990年代中頃から風力発電が活発に拡大されています。その立役者がラックマンさんでした。ラックマンさんは元々は、IT関係のエンジニアでした。

 デンマーク国境沿いのドイツ北端で市民風力発電をはじめたクリスチャンセンさんも、忘れることができません。

 再生可能エネルギーで発電された電気の固定価格買い取り制度(FIT)の原案を考案したのは、ドイツ西部アーヘンの市民たちでした。

 こうした立役者が地元で住民をまとめ、再生可能エネルギーを市民の手で普及させたのでした。

 各地において再生可能エネルギーを市民の手で普及させる。そのためには、各地で市民をまとめて牽引する立役者も、重要な役割を果たします。

まさお

関連サイト:
地道な市民論
エネルギー選択宣言

2018年10月7日日曜日

レアメタルやレアアースによる再エネ攻撃に騙されるな

 最近、ぼくの加入しているMLに、レアメタルやレアアースを使う風力発電を攻撃する記事のリンクが回ってきました。従来通りの発電方法を支援する米国のエネルギー•シンクタンクが拡散しているものでした。

 レアメタルやレアアースを採取する中国において、それによって排出される放射性廃棄物の管理がずさんなので、被害が出ているという内容です。直接風力発電を批判しているわけではありませんが、放射性廃棄物を排出する物質を使う風力発電はいかんといっているのは明らかです。

 リンクの送り主は、この情報は正しいのかと聞いています。

 情報は、間違っていません。風力発電では確かに、レアメタル、レアアースが使われています。その採取によって放射性廃棄物が排出されるのも事実です。

 それなら、風力発電は原子力発電と同じように、止めたほうがいいのでしょうか。

 記事では、記事に書いていないことが問題です。それは、レアメタルやレアアースが他にどういうものに使われているかということです。

 レアメタルやレアアースは、たとえば太陽光発電にも使われます。ハイブリッド車や電気自動車にとっても、とても大切な材料です。省エネランプであるLEDランプにも必要です。これら環境エネルギー技術に欠かせないということです。

 また発電機にも必要なので、発電のすべての分野に使われています。原発では、制御棒に使われ、原発の安全を確保する上でも欠かせません。

 日常生活においても、たとえば液晶テレビやタブレットコンピュータ、スマートフォンなどにもなくてはならないものです。

 こうして見ると、現在使っている技術のほとんどに使われていることがわかります。
 
 ただ問題の記事は風力発電にしか触れず、「放射性廃棄物=悪い」という単純思考から、風力発電はいかんという方向に導こうとしています。

 ここで問題にされている放射性核種が天然放射性核種であることも、はっきり書かれていません。天然放射性核種は地球上に多種あり、これは太陽系が誕生したプロセスを考えると、地球上にあって当然なものなのです。そして、これら放射性核種の半減期はたいへん長いので、崩壊して安定することがありません。つまり、とても長い時間にわたって、放射性物質であり続けるということです。

 原発事故によって発生する核分裂生成物としての放射性物質と違い、天然放射性核種ではぼくたちの被曝量が少ないことも知ってほしいと思います。

 被曝の問題ばかりでなく、レアメタルやレアアースが中国から輸入される割合がとても高く、中国だけに頼っているのはいいことではありません。そのため、材料のリサイクルのほか、代替素材や代替技術の開発も活発に行われています。

 確かに放射性廃棄物が排出され、しっかり管理されていないのは問題です。だからといって、それだけでレアメタルやレアアースを使っているのはすべていかんというわけにはいきません。それでは、現在ぼくたちの恩恵を受けている技術が成り立ちません。

 これは、「放射性廃棄物=悪い」という単純思考で済む問題ではありません。その点をはっきりわきまえて議論しなければなりません。そのことを知ってもらい、自分自身では何かできるかも考えることが必要だと思います。

 ぼくは、フェアフォーンというスマートフォンを使っています。これは、フェアトレード基準に従って製造されたスマートフォンです。ぼくはそれによって、末端労働者が過酷な条件で酷使されていないことを願っています。

まさお

2018年9月23日日曜日

再エネとソーシャル銀行

 今月(2018年9月)、バングラデシュではじまったマイクロファイナンス機関であるグラミン銀行が日本に進出するというニュースが出ていました。

 銀行の創立者ムハマド•ユヌスさんが2006年にノーベル平和賞を受賞したので、日本でも知っている方がいると思います。バングラデシュ農村部などで、生活や教育の質を改善する目的で貧困層を低金利、無担保で少額融資します。借り手が銀行の持ち主になるのも特徴です。

 ドイツでは、このグラマン銀行が再生可能エネルギー普及の手段として早い段階から注目されていました。

 それは、市民に資本力がなくても、再生可能エネルギーを普及させる基盤が市民にあるとの哲学があったからだと思います。そのためには、資本主義活動とは違う形で市民をサポートする手段が必要です。

 ドイツには元々、環境プロジェクトへの融資に特化した環境銀行や社会プロジェクトへの融資に特化したGLS銀行があります。これら銀行は組合銀行になっていて、銀行口座を有する市民などが出資して社員になって、銀行が資金調達します。

 市民一人一人が株主になりますが、出資額に関係なく、社員は誰も同等の投票権を持っています。これが、組合という形態の特徴です。

 ドイツでは、これら組合銀行が再生可能エネルギーの普及でとても重要な役割を果たしています。ドイツの市民電力会社EWSシェーナウも、最初に配電網を買い取る時にGLS銀行から融資を受けました(関連記事)。

 ぼくは、グラミン銀行も含めてこれらの銀行をソーシャル銀行だととらえるべきだと思っています。そこでのキーワードは、市民です。市民が大きな資本で動く経済とは違う形で、資本を共同調達して、共同で経済活動を行っていくことをサポートします。マイクロファイナンスもその一つです。

 市民が今後、再生可能エネルギーなどの分野で大きな力を持っていくには、ソーシャル銀行がとても大切なっていきます。それによって、市民が自力で資本を調達し、市民の自立、自治管理を促します。

まさお

2018年9月9日日曜日

ブロックチェーンは必要?

 ぼくは、サイトにアップした記事「エネルギーとデジタル化」と本ブログの記事「エネルギーの技術革新遅れていいの?」において、ブロックチェーンについて述べました。

 ブロックチェーンがビットコインで使われている高度な技術であり、電気の供給、消費を記録してそれを決算する技術として信頼性があるとされるからです。

 ただ、ぼくは電気の供給と消費に関してブロックチェーンが本当に必要なのかどうか、疑問に思っています。

 というのは、ぼくはこの分野ではまだ勉強不足ですが、電気の供給と消費に関しては、ビットコインのように高速、高度にいちいち細かくデータを把握して決算する必要があるとは思えないからです。供給した量と消費した量の差額を、たとえば月単位で把握できれば十分なはずです。それは、スマートメータで把握しているはずだし、月毎の差額さえわかれば決算できるのではないでしょうか。

 また、ブロックチェーンにはたくさんのサーバー容量が必要で、そのための処理ばかりでなく、サーバーを冷やすために莫大な電気が必要になります。

 省エネしながら、エネルギーをできるだけ効率よく使うことも大切です。この点でも、ブロックチェーンのエネルギー消費の多さを考えると、何でもブロックチェーンでやろうといってしまうことにとても疑問があります。

 エネルギーの分野で本当にブロックチェーンが必要なのかどうか、もっと真剣に議論してほしいと思います。

まさお

2018年8月26日日曜日

エネルギーの技術革新遅れていいの?

 ぼくは7月29日にアップしたブログ記事「日本のエネルギー基本計画は、自殺行為だ」で、既存の電力システムを温存しようとする日本の政策を厳しく批判しました。

 それは、これまでの大規模設備、中央集中型の電力システムでは、将来のエネルギー供給に対応できなくなり、高い電気料金を受け入れざるを得ない日本が世界から取り残されていく心配があるからでした。

 そればかりではありません。

 再エネへのエネルギー転換のために、各国は今、新しい技術開発で競い合っています。ただ新しい技術というのは、それほど正しくないかもしれません。というのは、既存の技術で十分だからです。それをエネルギー供給システムにマッチングさせればいいだけになっています。

 ドイツでは、送電網を安定させるため、送電会社がその中央監視室からボタンひとつで発電設備を送電網から切り離す(解列)ことができます。数年前日本にいた時には、日本ではそれを電話でやっているということを聞きました。それも、実際に切り離す数日前に連絡しなければならないということでした(本文「日本の電力供給システムは遅れている」参照)。

 ぼくは、唖然としました。技術国日本で石器時代のようなことをしていることが理解できませんでした。エネルギー供給システムをデジタル化して、ネットワーク化すれば何でもないことです。その技術は、日本にもあります。この分野では、日本の技術の方がドイツよりも優れているのではないでしょうか。

 それでいて、なぜその技術を使えないのでしょうか。

 それは、既得権益を守るために、既存の電力システムを維持しようとしているからにすぎません。そのために、日本の技術革新力と国際競争力を強化することが、二の次になっています。

 ドイツでは今、再エネのデジタル化、システム化に関する技術が盛んに開発されています。それは再エネの発電量に占める割合が30%を超えて、システム化の需要が増えてきたからです。さらに、技術を実情に合わせて試験できる条件が整ってきたからです。

 ドイツは、第四次産業革命の技術ともいわれ、ものつくりのデジタル化をめざす「インタストリー4.0」とエネルギーのデジタル化を組みわせていく予定です(本文「アクティブな地産地消で余剰電力を消費」参照)。

 現在、昨日サイトにアップした記事「エネルギーとデジタル化」でも述べたように、エネルギーのデジタル化においてビットコインの中核技術であるブロックチェーンがとても重要な技術になるとされています。さらに、エネルギーと「インタストリー4.0」を組み合わせることで、人工知能(AI)の適応範囲がエネルギー供給からものつくりにまで広がります。産業全体の流れが人工知能(AI)によってネットワーク化されるということです。

 ドイツ政府は、人工知能(AI)を今後の国家戦略にします。今の状況をみると、その意図がよくわかります。

 さて、日本はどうするのでしょうか。

まさお

2018年8月19日日曜日

エネルギーを肌で感じる

 エネルギーとは、何でしょうか?

 ぼくは、9章の「エネルギー源は暮らしの中にある」で、「自分の身の回りで里山や里海を見つける」のが大切だと書きました。

 ぼくたちは、光エネルギー(太陽の光)や運動エネルギー(風や川の水)、熱エネルギー(火力、原子力)を電気エネルギーに換えることによって電気を得ています。熱エネルギーを得るための燃料(石炭)は、化学エネルギー(光合成)によってできたものです。

 電気自動車は、電気を運動エネルギーに換えて車を走らせます。自転車は、ペダルを踏んで足の運動エネルギーをチェーンでタイヤに伝えているから走ります。

 こうして見ると、エネルギーというのは中学校で学んだ理科で十分理解できるものです。生活に密着していて、身の回りで使っているものだと感じます。

 これをもっと可視化させて、ゲームをしながらエネルギーを肌で体験する。それが、ドイツ北西部のアウリヒという町にある「エネルギー学習体験センター(EEZ)」のコンセプトではないかと思います。

 設置、運用しているのは、風力発電設備の大手製造メーカ「エネルコン(Enercon)」です。

 最初に、インストラクターがセンターでの遊び方を簡単に説明してくれます。その後、一人一人がエネルギーゲームに挑戦します。一通りやってみるには、3時間ほどかかります。

 最初に小さなステッィクのようなものを渡され、それをゲームをする装置に差し込んで、ゲームで得たポイントを集めます。最後に集計装置にステイックを差し込んで、集めたポイントを見ます。発行キーを押しておくと、出口のカウンターで成績表をプリントアウトしてくれます。

 ぼくは先日、NPO法人アースウォーカズの独日交流プロジェクトで福島県からドイツにきていた高校生9人と一緒にこのセンターにいってきました。

 LEDランプの光だけで、モデル自動車の屋根に取り付けられた太陽電池で発電させ、モデル自動車を動かすゲームがありました。光の角度によっては、モデルはまったく動きません。風で風船を動かして、輪型になったルートを一周させるだけのゲームもあります。風が適切になるように、レバーで風量を調整しなければなりません。滑車を回して木のボールを上に上げ、ボールを設置されたレールの上をころがすゲームもありました。

 そうかと思うと、火力発電所や原子力発電所を太陽光発電や風力発電に替えるには、画面上どの場所に移すのが適切か探し出すゲースもありました。適切な場所を見つけ出すと、どれくらいの発電容量に代わるのかも教えてくれます。画面上で適切な場所を探すのが、とても難しいゲームでした。

 エネルギー変換の関係を結びつけるゲームもあります。光エネルギーを運動エネルギーに換えるものは何か、化学エネルギーに換えるものは何かなど、その関係を見つけます。

 こうして、ゲーム毎に点数を集めます。難しいゲームも、簡単なゲームもあります。どうしていいのかわからなくても、とにかくやってみる。エネルギーとはどういうものなのか、エネルギーのことをもっと知る。それを実際に体験してみます。

 エネルギーが生活に密着したものであることを、肌で感じます。

 子どもも大人も楽しめるエネルギーゲーム。福島県の高校生からは、難しくてよくわからないという声もありました。でも、遊びながらエネルギーに接することができるのはとても大切です。こうした施設がもっとあればいいなと思います。

まさお

EEZサイト:www.eez-aurich.de

2018年8月5日日曜日

交通政策を下から変える

 都市を自動車交通によって窒息させてはならない。

 これが、ベルリンで起こった「Changing Cites」運動のモットーです。運動の中心は、若い世代です。

 公共空間は一体誰のものなのか。公共空間は、自動車や経済活動のためのものではありません。市民は、それに甘んじていてもいけません。市民は、公共空間を市民のものにするために立ち上がるべきだというのが、運動する若い人たちの考えです。

 スマートシティ化。それが、運動の目指すものです。市民が平等に、民主主義的に公共空間を利用できる都市。都市のインフラ整備についても、市民のためのものなのか、市民が監視していかなければなりません。

 そのためには、交通政策の転換も必要です。本来であれば、市民のための交通政策でなければなりません。最近のトレンドである自転車専用道路や交通手段のシェア化だけでは、交通は市民のものになりません。こどもが道路を安全に利用できる権利も守らなければなりません。

 経済を目的とした広告が、都市から撤廃されることも望んでいます。

 こうした市民の都市に対する希望を実現するほか、都市開発において市民側から問題を提起します。そのために住民投票を行って、政治に圧力をかけることもあります。

 また、同じ考えを持つ市民をネットワーク化します。

 「Changing Cites」運動はこうすることによって、道路などの公共空間を市民の対話の場となることを望んでいます。それが、地元の経済力を促進し、都市生活の質を向上させることにもつながります。

 ベルリンではじまった運動は、ドイツ各地に広がっていきました。

 こうした運動が、日本でも起こってほしいと思います。

まさお

参考記事:「バイバイ自動車中心社会